先日、クライアント先で管理職手前の社員を対象とした研修を行った際、参加者の方がこんな話をしていました。
「以前、評価に関して上司と言い合いになったことがあります。自分たちはまだ管理職ではないから、自分はプレイヤーとして頑張って 高い成果を出したのに、上司が思うような評価をしてくれないのです。上司が言うには、管理職手前の自分たちにはもっとマネジメント的な役割を期待しているから、プレイヤーとして頑張っても評価できない、とのこと。そこで、そもそも自分たちの職位に求められる役割は何なんだ? と、随分上司と言い合いになってしまったのです。 最終的には、会社が自分たちに求めているのはマネジメント的な役割だ ということがわかり、評価は良くなかったけれど、 議論自体は良い機会になりました・・・」
「部下が思うように動いてくれない」「なかなか後継者が育たない」 という状況に嘆くことも多いですが、 そもそもこのように、前提となる期待役割について本人との意識統一が図れておらず、 部下が期待とは異なる役割や業務に注力してしまっているケースも多いのではないでしょうか? 先日、別のクライアント先で、「被評価者」研修を行いました。
通常、評価者研修は行っても、被評価者に対してはマニュアルや説明会で終わらせる場合も多いのですが、この会社では、「評価制度を適切に運用するためには、被評価者自身の理解を深めることが重要」というポリシーのもと、全社員に対して半日ずつ研修を行ったのです。
結果としては、評価制度の運用に留まらない、大きな効果が得られました。その最も大きなものが、「期待役割に関する意識統一」です。
そもそも人事制度というのは、会社の成長ステップや人材要件を反映させて、会社や経営者の想いを存分に込めて作り込んであることが多いのですが、それが社員に100%伝わっているということは、なかなかありません。しかし、制度の理解が十分深まらないままに、
「ちゃんと評価してもらえない」
「上司がちゃんと見てくれない」
と嘆く社員は、どの会社にもたくさんいます。そこで、まずは自分たちがちゃんと制度を理解し、ちゃんと評価してもらえる 自分になろう、という趣旨で行った研修だったのですが、
□等級の考え方がとても大切だということを知らなかった
□自分自身の期待役割を間違えて理解していた
□これからの仕事に目的意識を持って取り組めそう
など、
「自分には何が期待されているのか」
「この会社で成長するとはどういうことか」
という気づきを得た参加者が多く、人材育成の観点からも、とても意味のある場になったのでした。
評価制度、評価者研修というと、
日常業務や日々のマネジメントとは関係のないもの
人材育成とは別もの
と捉えられがちですが、その根底にある基本的な思想というのは、日々のマネジメントや人材育成と共通していると思います。
特に、各階層(職位)に期待される役割など、「会社からの期待」を社員が理解する上で、とても重要な役割を担います。
そもそも評価制度とは、個々の社員にとっては、給与や賞与、昇進に関連する とても重要なもの。
だからこそ、評価関連の研修ではいろんな不満や問題意識も噴出しますが、その分、真剣度の高いものでもあり、そこで伝えるべきメッセージも、参加者一人ひとりにストレートに響くのではないかと思います。参加者のフィードバックを受けて、改めてそれを実感しました。
中核となって周りを引っ張っていくリーダー人材を育てていくには、常に適切な(かつストレッチした)役割設定を行い、本人の能力を最大限引き出す ことがとても重要です。そのためには、上司と本人が期待役割について共通の認識を持って業務に取り組んでいくことが第一歩。そのための一つのツールとして評価制度を捉え、「被評価者」教育 にも、もう少し力を入れてみても良いかも知れません。
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