株式会社インディプロス

【3】「巻き込まれ文化」

【3】「巻き込まれ文化」


※このコラムは、2010年5月配信のメルマガでお届けしたものです

 社員のリーダーシップを開発するために必要なことは何でしょうか?

 集合型の研修を行ったり、あるいは、「役割が人をつくる」という考えのもと、
 リーダーとしての役割や場を実際に与えてみる、

 といった取り組みを行い、次世代リーダーの育成に励んでいる会社は
 多いと思います。

 それらはもちろん大切ですが、それ以外に忘れてはいけないものがあります。
 それは、「組織の風土・文化」です。

 人は、相手のポジティブな反応が予測できる状態であればあるほど、
 積極的な行動を起こしやすくなります。
 (家族や親しい友人との関係がその最たるものですね)

 つまり、協力を呼び掛けたり、アイディアを提案したとき、
 周囲が常に肯定的に、協力的に反応してくれるという環境であれば
 あるほど、積極的な働きかけがしやすくなる=リーダーシップが発揮
 しやすくなると言えます。

 逆に、「何を言っても批判的に返されてしまう」という環境では、
 いくら資質のある人でも、周囲を巻き込む行動をとることを躊躇してしまう
 のではないでしょうか。

 ひどい時には、「何を言っても(やっても)無駄だから・・・」
 という諦めが先行してしまうようになり、引っ込み思案・自己完結型の
 社員ばかりになってしまう危険性もあります。

 「リーダーシップを身につけなさい」と言いながら、上司や周囲のメンバー
 が積極的に協力しない風土では、リーダーシップも開発できないのです。

 以前プロジェクトでお付き合いした会社では、「巻き込まれ文化」
 というものがありました。

 その会社では、たとえ入社一年目であっても、自由にアイディアを出したり、
 周囲を巻き込んでプロジェクトを立ち上げていくことが常に求められていました。

 それに対して先輩や上司は、可能な限り肯定的な反応を示し、
 面白いと思えば、支援役として積極的にプロジェクトメンバーとして協力して
 いきます。

 そんな雰囲気が社内全体に浸透していて、それをひとつの風土として
 社員全員が認識しているのです。

 上司とはそういう(部下やメンバーの支援者である)もの、という価値観を、
 ずっと以前の先輩方から綿々と受け継いできたのだそうです。

 結果としてその会社では、組織の枠組みや役割範囲など関係なく、
 社内でいろんなチームが生まれ、あちこちで面白そうな取り組みが
 動いている状態が続いていました。

 そして、当然その会社では、若くてもリーダーシップをとれる
 (周囲を積極的に動かすことができる)人材が多く育っていたのです。

 これを我々は、「巻き込まれ文化」と呼んでいました。

 人を積極的に巻き込んでいく「巻き込み力」ももちろん大切ですが、
 そのような力が発揮できる前提として、

 他者の意見や取り組みにあえて巻き込まれていく「巻き込まれ力」を
 全員が備えていることも、組織内にリーダーシップを生み出していく上では
 とても大事なのだということを、その会社の様子を見て、
 改めて実感しました。

 「巻き込まれ文化」・・・これを醸成するのは、簡単そうに見えて、
 意外と難しいものです。

 いざ、若手からの呼びかけや提案を受けてみると、

 「自分の方が経験が豊富だ」
 「若手のアイディアを簡単に受け入れるのはなんだか抵抗がある」

 といった、プライドや抵抗感が邪魔をしてしまうことがあるからです。

 だからこそ、上記の企業のように、あえて

 「これが自分たちの文化なんだ」
 「これが自分たちの求める上司像だ」

 という形で明文化し、社内で共有することが大切なのかもしれません。

 特に入社後数年の、社会人としての行動パターンが刷り込まれる期間に
 このような風土があるかないかで、リーダーシップの開発のされ方は
 大きく変わってくると思います。

 リーダーシップは、組織全体で、風土・文化で養成していくもの。
 そう考えて、自社のリーダーシップ開発(次世代リーダー育成の在り方)を、
 もう一度考えてみてはいかがでしょうか。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
※最新のコラムはメールマガジン(隔週発行)でお届けしております。

◆リーダーシップは「チーム」で完成させる!◆
 インディプロスでは、「リーダーシップはリーダーだけのものではない」をコンセプトに、
 チーム全体でリーダーシップを発揮していくためのプログラムをご提供しています。

 単なる座学の研修だけではない、現場業務との繋がりを意識した「プロジェクト」です。
 詳しくはこちらをご覧ください。