ワークライフバランスやコスト削減の流れの中、業務効率化や残業短縮に取り組む企業が増えています。
先日もとある地方自治体が「残業ゼロ革命」を打ち出しましたが、中でも、「無駄な会議の廃止」は、私にとっては印象的でした。
長い会議、たくさんの会議は、以前から無駄なものの象徴として様々な企業で語られてきたことと思います。
でもだからといって、むやみやたらに会議をなくそう、短縮しようというのは、私としては避けたいところなのです。
私たちの行っている人事制度構築やその他の仕組み作りのプロジェクトは、プロジェクトメンバーの方々と何度となくミーティングを重ねて進めていきます。
ただ、その進め方や一回あたりのミーティングの長さは、メンバーの方々のワークスタイルや忙しさによって、少しずつ異なります。
あるクライアントでは、とても多忙なメンバーが集まり、いつも「MAX1時間でお願いします」と言われ、常に時計とにらめっこの打ち合わせ。
かと思えば、ある会社では、毎週1回の定例ミーティングを設定した上、毎回3~4時間は当たり前のエンドレス会議。
前者は、とにかく時間内に伝えるべきことだけは伝えようと、「効率」や「スピード」を気にして必死です。
一方後者は、何度も同じ話を繰り返し、ときに堂々巡りをしながら、ゆっくりゆっくり設計が進んでいきます。
では、結果としてどちらが良いアウトプットが出るか・・・と言うと、私の経験上は、圧倒的に後者の方が高い成果が出ます。
その理由は、じっくり時間をかけて議論をすることで、細かい疑問や不安、不満の一つひとつをしっかりクリアしながら検討を進められることが第一。
そしてそれ以外にも、議論の過程で何度も「そもそも・・・」の部分に立ち返ることで、自分たちが最も大切にしたいコンセプトや価値観がクリアになったり、
毎回思いのたけをぶつけ合うことで、制度の導入や運用時にとても大切になってくる関係者(運用主体メンバー)のオーナーシップやチームワークが出来上がってくる、という効果もあります。
そして、上記のようなプロセスを経てはじめて、出来上がった制度に魂がこもるのだと考えています。
一見、とんとんと決定事項が決まり、スムーズに会議が進むと、ものごとが順調に進んでいると感じ、気もちが良いものです。
でも、
「本当に疑問や不安は全て解消されているのだろうか・・・」
と、非常に気持ち悪さを感じることも事実です。
時間をかけて話し合うからこそ、小さい疑問や不安まで口にすることができ、心底納得いく議論ができる。
メールではなく、顔を合わせて議論をすることで、他人の意見に触発されて、自分自身の中で引っかかっているものが浮き彫りになり、自分の想いや意見を全て吐き出すことができる。
それが、会議を行うことの最大のメリットです。
特に人事制度では、現場での運用をイメージするにつれて、無数の細かい論点が発生してくるので、多少の行ったり来たりは当たり前。
必ず何度かは、議論が混沌とすることもあると思います。
会議が長引き、なかなか結論が出ない・・・となると、「効率が悪いなぁ」とか、「仕切りが悪いのでは?」などと、ネガティブな感情が湧いてくることもありますが、
その混沌こそが、制度や仕組みに魂を込める上で必要なプロセスとなっていることも多いのです。
そしてこれは、設計段階のプロジェクトだけでなく、仕組みを現場に落とし込んでいく際にも同じです。
現場からの意見や反論はできるだけ出さないように・・・と、短時間で説明のみ、意見は受け付けない、という説明会を行うケースもありますが、
制度に魂を込め、現場のオーナーシップを高めていこうと思うなら、できるだけ現場から疑問や意見、要望を聞きだしやすい投げかけをし、あえて混乱の場、議論の場を作り出すことも、ひとつの手段です。
もちろん、とにかく時間さえかければ良い、というわけでもありません。
何事もメリハリ。時間をかけるべきところとそうでないところの選択が、とても重要なんですね。
混沌が魂を生み出す必要プロセスにもなり得るんだ、ということを念頭に置き、何もかもを効率的に、スピーディに、と画一的に考えてしまうことだけは注意したいものです。
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