株式会社インディプロス

【3】360度評価は制度ではない!

【3】360度評価は制度ではない!

前々回から、人事制度、特に評価制度の活用法についてお話をしていますが、評価制度の話をしているとよく出てくるのが、360度評価の是非についてです。

クライアント先で社員の方々にヒアリングをしていると必ず出てくる意見が、「上司を部下が評価したい」ということ。

つまりは、現場社員は360度評価を求めていることが多いんですね。一方で、360度評価については消極的な意見も数多く耳にします。

その大きな理由の一つは、客観性の担保が難しいから。

管理職である評価者でさえ、評価スキルが十分備わっているとはいえない状況の中、
評価をすることに慣れていない一般社員が人を評価するのは難しいのではないか・・・。

という懸念が大きいようです。

またもう一つ、「部下に評価されている」という意識が強くなるあまり、
厳しいマネジメントができなくなったり、部下のご機嫌をとる上司が出てきたりと、
マネジメントに悪影響が出るリスクもあります。

そのような懸念はよく理解できますが、それでもあえて、私は360度評価の導入を
提案するケースがあります。

それは、360度評価というのは単なる「人事制度」というだけでなく、
風土作りの大きな仕掛けとなりうるからです。

個人のキャリア形成やプロフェッショナル化に強く焦点が当てられ、企業の人事制度
においても自律性やプロ意識が強く求められるようになった流れの中で、

周囲との協調やチームで成果を出す、という部分への意識が薄くなってきてしまった
・・・という問題意識を、多くの企業が感じています。

そのような状況の中、昔のようなチームワーク(協働)の文化を取り戻すのに、
360度評価が一役かってくれることも多いのです。

それは、この仕組みには、

  ●相互フィードバックの文化を根付かせる
  ●「他人視点」で自己を検証する
  ●「仲間」としての価値観を共有できる

という効果があるからです。

チームワークが十分でない組織には、過剰な遠慮からか、もしくはお互いに無関心
だからか、「相互不干渉」という雰囲気があります。

そして、それが恒常的になって、コミュニケーションがなくなってきます。

また、そのような状況が続くと、自分や自分の行動は、果たして周囲に受け入れられて
いるのか・・・ということもわからなくなってしまい、さらに個々人が孤立してしまうことが
あります。

そんなとき、半年に1回、あるいは1年に1回でも、
「周囲からの受け入れられ度合いを確認してみる」というのは、とても貴重な機会
だと思います。

また、フィードバックをする側としても、相手に一歩踏み込んで自分の考えを伝えることで、
そのときだけは、相手のことをじっくりと(育成視点で)考えてあげられる。

そんな場を意識的に設けることで、

  「相手のことを考える」
  「相手視点で考える」
  「自分たちが本当に大切にしているものを確認する」

といった、協働のベースにある思考やマインドを植え付けていくことも可能なのです。

とはいえ、冒頭にも触れたように、360度評価は諸刃の剣。

使い方によっては風土を悪化させてしまうので、導入にはコツと注意が必要です。

一番大切なのは、“360度評価は「制度」ではなく「文化」だ”という考え方。

これによって誰かを非難しようとか、給与を上げ下げしようとするのではなく、

 「半年か1年に一度は、自分たちの仲間のために時間を使おう」

という感覚で導入するのが、この仕組みをうまく機能させる一番のコツだと思います。

まずは職場単位で、自分たちを振り返るためのOJTツールのひとつとして、
360度評価を導入してみてはいかがでしょうか。

※このときは、名称を「360度フィードバック」や「ピア・レビュー」としてもよいですね。

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